概要
近年、スマートフォンのシェアは高まりつつあり、日本においても急速な拡大傾向が見られる。また、スマートフォンで写真の撮影と共有が行われる事も増えている。
スマートフォンでの撮影では手ぶれを防ぐためか、両手を使って撮影する人が多く見られる。しかし、両手を使って撮影する事が困難な場面が多く見られる。例えば荷物を持った状態での歩きながらの撮影などがあげられる。こうした場面では片手親指のみの操作で撮影できる事が望ましい。片手で保持したタッチパネル携帯端末の操作性と、ユーザーインターフェイス(UI)との関係性についての研究は既に行われており、具体的なUIの設計指
針を提案されている。しかし、カメラアプリケーションのUIを設計するためには、こうした指針だけでなく、カメラアプリケーションとしての特性を考慮する必要がある。
そこで本研究では、片手保持での操作に適した、カメラアプリケーションのためのシャッターUIを3種類、実装した。親指の可動範囲を考慮して設計し、画面左下と画面右にシャッターボタンを配置し、画面表示を妨げないUIとして画面のどこでもタップする事で撮影できるUIを実装した。また、現在のカメラアプリケーションの傾向の調査と、観光スポットで撮影する際の保持方法の観察を行った。これら調査を元に、比較対象となる一般
的なUI配置(標準UI)と、実験時の持ち方を定義した。
標準UIと実装したUI(提案UI)それぞれに対し、被写体を連続して撮影する実験を行い、撮影時間と撮影の正確さ(被写体の画像内の位置)を測定する比較実験を行った。同時に、定義した一般的なUIを使って両手保持と片手保持による比較実験も行った。結果として、(1)シャッターUIを提案UIに変える事で撮影速度が向上できる事と、(2)片手で標準UIを操作するより、持ち方を両手に変えたり、シャッターUIを提案UIに変えることで撮影の
正確さがわずかながら向上する事が分かった。