概要
家族関係に関わる心理アセスメント手法の中で、「家族関係単純図式投影法」や「家族イメージ法」のような図式を用いた手法は、クライエントの抵抗感が低いし、操作が簡単なので適用範囲が広いと言われている。その中で、「家族イメージ法」は「家族関係単純図式投影法」に比べて、図式の項目を増やすことによってより豊富な情報を得ることが可能になった。本研究では、今までの図式投影法に用いられていない色情報を付加し、読み取りにくいと指摘されている家族成員の特徴に関する情報を補充することを目指す。家族成員の特徴において本研究はパーソナリティに着目した。
パーソナリティは一見つかみ難い概念であるが、五位アプローチの研究によって提唱された「ビッグ・ファイブ」という理論は広く認められている。「ビッグ・ファイブ」はパーソナリティの表れであるという性格表現用語を分類し、パーソナリティを5つの因子からつかめることができるという理論である。本研究は「ビッグ・ファイブ」の「100語版性格表現用語」を実験試料とし、各性格表現用語を表現するに適する対応色について調査した。
関連研究および色とパーソナリティの関係から見ると、色情報を図式投影法に付加することの可能性が確かめられ、また、パーソナリティの表れである性格表現用語を試料とし、各性格表現用語の対応色について実験を通して調査した結果、以下のような結論が得られた。
・各正確表現用語には対応色、対応色が明確ではない正確表現用語にはトーンか色相における傾向が見られた。
・意味の近い正確表現用語の間には対応色の同調性が見られ、ビッグ・ファイブにより分割された正確表現用語は対応色においては、因子(側面因子)による区切りは当てはまらなかった。また、パーソナリティの色表現における色の多意性が見られたので、今後は色とパーソナリティの関係によってパーソナリティを表す正確表現用語を再分類する必要性があると考えられる。
・図式投影法における色の付加可能性が確認されたが、一つの色である種類のパーソナリティを表現しきれない部分があるので、複数の色で表現することが考えられる。
・パーソナリティにおける色情報を読み取る時には、その色の属している色相とトーンをかねて考慮することが重要である。
・本研究で得られた実験結果は「正確表現用語」とその「対応色」に集中しているので、今後はアセスメントの現場で、図式投影法におけるパーソナリティの色表現について応用し、実際の有効性を確かめる必要があると考えられる。