宮崎駿の映画作品における自然表現意図と視聴者が抱く印象の関連分析

Thesis
張 弛, 宮崎駿の映画作品における自然表現意図と視聴者が抱く印象の関連分析, 筑波大学, 2015,

情報学学位プログラム 2014年度 修士論文。

概要

 「アニメーション」は、絵・人形などの素材を少しずつ動かしながら、コマ撮りによって映像を作るという映像技術である。本研究はアニメーション作品の映像表現手法について学術的な検討を試み、表現の構成と観客の印象について分析を行ったものである。
 本研究では宮崎駿監督映画作品における自然描写に焦点を当てた。これまで、絵画、小説、映画など様々なメディアにおいて、自然描写の構成やその役割に関する分析があり、自然描写の叙情性や物語との関係を示した。宮崎駿作品を対象にした理由として、自然の描写の仕方は宮崎駿作品の最大の特徴と言われていることがあげられる。宮崎駿はストーリーの構成や登場人物の心境を意識し、相応な表現様式で自然を表現していると考えた。
 先行研究では映像表現の構造的分析と印象調査分析についての研究いくつがあげられる。それらの研究を参考に、宮崎駿監督作品の自然描写における映像表現の様式を分析し、観客が受けた印象と自然表現様式の関連性を考察した。
 「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」の四作品において、自然描写が含まれる 32 シーンを抽出し、それぞれの表現様式をまとめた。また、観客が対象シーンから受ける印象を被験者実験で調査した。
 その結果、登場人物の似たような境遇を同様な自然物や自然現象で表現するパターンが見られ、ストーリーテリングの一環として意図的に自然を表現していると考えられる。対象となる自然表現映像が観客に与えた印象を調査することで、宮崎駿監督の自然描写の仕組みが、アニメーション作品に効率よく反映され、感情移入を補う役割として観客に伝わっていたことがわかった。このように宮崎駿作品の表現技法を考察することは、一般的なアニメーション映像の表現手法の開発に役立つと期待できるであろう。

  • 主研究指導教員:金 尚泰
  • 副研究指導教員:鈴木 誠一郎