人工生命技術を活用した自律型電子ペットの開発と心理的効果の検証

Thesis
SAIKAWA Takuma, 人工生命技術を活用した自律型電子ペットの開発と心理的効果の検証, University of Tsukuba, 2025,

2024年度修士論文

概要

本研究は、人工生命技術と深層強化学習を活用し、従来型電子ペットでは実現が難しかった予測不能性や自律性を備えた「自律型電子ペット」を設計し、その心理的効果を探索的に評価した。自律型電子ペットは、多様な振る舞いを生み出すことでユーザとの新たな関係性や心理的価値を創出することを目指す。実験の結果、「元気」「活気」の増加などポジティブ感情の一部指標で既存電子ペットを上回る傾向が見られ、印象評価では「自律性」「予測不能性」「庇護欲」などの項目で特に高い評価を得た。一方、因子分析では印象評価が「感情的つながり」「自律性・庇護的感情」「自然さ・生き物らしさ」の3因子に整理され、自律型電子ペットが「自律性・庇護的感情」因子で優位性を示す一方、短期的な心理状態変化との直接的関連は限定的であることも示唆された。本研究は、自律型電子ペットが短期的な安定感よりも長期的な愛着形成やユーザの関与深化に寄与する可能性を示し、人工生命技術を応用した電子ペット設計の新たな方向性と、長期的な検証・評価の必要性を提示するものである。