インフォグラフィックスを用いた風味の視覚化手法の提案—コーヒーの官能評価の視覚化を中心として—

江波戸 憧音, インフォグラフィックスを用いた風味の視覚化手法の提案—コーヒーの官能評価の視覚化を中心として—, 2025, https://www.mast.tsukuba.ac.jp/intra/thesis/fy2024/pdf/202110298.pdf

概要

嗜好品などで用いられるフレーバー(味と香りの複合的な要素)の官能評価において、評価結果を言語化することは一般的な手法である。特にコーヒーについては、コーヒーのフレーバーホイールが作成され、一定の認知度を獲得している。しかし、専門的な用語やフレーバーノートを用いた表現は、一般の消費者に向けた内容ではなく、言語化された文章から正確にフレーバーを想起し、その強度や持続性を理解することは困難である。本研究では、香りやフレーバーの伝達・共有をより分かりやすく、的確に行えることを目的とした可視化手法を検討した。具体的には、官能評価の際に用いられることの多い単語を視覚化するにあたり、味覚と形のクロスモーダル効果を利用することを提案した。図形を曲線性・複雑性・均一性の3軸で設計し、それを「まろやかな酸味」や「長い余韻」などの味覚表現を基に選択した場合に傾向が見られるかを検証した。また、図形の大小、濃度、グラデーションについても、味覚表現との関連性を調査した。実験の結果として味覚表現と視覚的形状の間には、選択の際に強い関連性があることが明らかとなり、風味を視覚的に表すことが有効である可能性が強く示唆された。本研究は、理解を促進する風味の視覚表現の特徴を明らかにすることで、多次元的な要素を持つ風味のコミュニケーションの新たな可能性を探ることを目指している。